この記事の目的
・税金の処理を理解する
・繰越利益剰余金の内容を理解する
簿記3級は、2018年度までは主に個人商店が対象の会計処理でした。しかし、2019年度からは、より実務に近い試験を意識したいという考えから改訂が行われ、株式会社を対象とした会計処理なります。その中で今回は、「税金」と「純資産」の分野について説明します。
目次
Table of Contents
会社が払う税金(法人税等)と無視できない消費税
簿記3級は株式会社が対象のため、会社が支払う税金についても仕訳をします。簿記3級で対象になる税金は、法人税・住民税・事業税です。(簿記3級の試験では詳しい内容についてまでは問われないので、税金の種類の言葉のみを覚えましょう)
法人税・住民税・事業税の3つをあわせて「法人税等」勘定で処理します。仕訳は、パターンが決まっているため、何度も復習をして覚えていきましょう。
例題
A株式会社は中間申告を行い、法人税2,000,000円と住民税・事業税1,000,000円を現金で支払った。
※中間申告とは・・・確定申告で支払う法人税の金額を軽減するために行います。事業年度から6ヶ月を経過した経過した日から2ヶ月以内に支払うのが規則です。法人税の前払の意味をします。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仮払法人税等 | 3,000,000 | 現金 | 3,000,000 |
法人税・住民税・事業税は、合わせて法人税等勘定にします。しかし、中間申告のため金額は仮の金額です。この場合は、「仮払法人税等」勘定にします。
消費税の期中取引は、全て「仮払」として処理
消費税は、商品販売等にかかる税金です。期中の仕訳は、販売側と仕入側の両方で仮払い、仮受けとして処理します。
消費税は、一度会社が管理をして後日支払います。そのため、期中の処理は仮払と仮受です。その後、決算で仕訳をして確定申告で支払います。
例題
仕入側
商品1,100円(消費税100円)を仕入れ、代金は現金で支払った
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕入 | 1,000 | 現金 | 1,100 |
仮払消費税 | 100 |
商品代金は1,100円ですが、消費税の100円が入っているため、仕入勘定は1,000円です。消費税の支払いは「仮払消費税」勘定で処理します。
販売側
商品1,100円(消費税100円)を売り上げ、代金は現金で受け取った
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 1,100 | 売上 | 1,000 |
仮受消費税 | 100 |
仕入側と同様に、消費税を除いた金額1,000円が売上勘定です。消費税は「仮受消費税」勘定で処理します。
株式会社に必要な「繰越利益剰余金」
【重要】この分野については、内容を理解する時間がかかります。簿記3級の時点では、仕訳のみを覚えるのも一つの方法です。
個人商店が試験の対象の場合は、当期純利益は「資本金」勘定に振り替えられるのみでした。しかし、株式会社が対象の場合は、新たに「繰越利益剰余金」勘定を用います。なぜなら、株式会社の「資本金」勘定は、株主から払い込まれた財産であると考えられ、当期純利益と区別をしなければなりません。
株主への配当の流れ
決算から株主への配当金が支払われるのは、次の通りです。
①決算で、繰越利益剰余金への振替
②株主総会で剰余金の配当等を承認
③株主へ配当金が支払われる
具体的な仕訳の方法
①決算において、当期純利益200,000円を計上した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
損益 | 200,000 | 繰越利益剰余金 | 200,000 |
決算の項目でも詳しく説明しますが、当期純利益を計算するため「損益勘定」を使用します。
利益が出た場合は、貸方に残額があるため(収益―費用で収益が多いから貸方に金額が残る)借方に損益勘定を書いて残額は0です。
例題
株主総会で、配当金の承認等を行った。科目ごとの残高は以下の通り(全て貸方に残高)
資本金 20,000,000
資本準備金 1,600,000
利益準備金 800,000
繰越利益剰余金 3,000,000
配当金等の承認
利益準備金 各自計算
配当金 500,000
別途積立金 400,000
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
繰越利益剰余金 | 950,000 | 利益準備金 | 50,000 |
未払配当金 | 500,000 | ||
別途積立金 | 400,000 |
株主総会で行う仕訳の科目は3種類です。
①利益準備金 ・・・計算によって決められた金額を利益準備金として積み立てる
②配当金 ・・・株主に対する配当金。払っていないため「未払配当金」勘定を使用
③別途積立金 ・・・会社の資金を確保するために、繰越利益剰余金の一部を積み立てることが出来る
利益準備金の計算方法
「配当金の10分の1を、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1になるまで積み立てる」のが規則です
配当金の10分の1 500,000÷10=50,000
資本準備金と利益準備金の合計 1,600,000+800,000=2,400,000
資本金の4分の1 20,000,000÷4=5,000,000
資本準備金と利益準備金の合計が、資本金の4分の1になっていないため、配当金の10分の1の金額を、利益準備金に入れます。
まとめ
簿記3級に新たに加わった分野のため、最初は難しく感じます。新たな分野は、受験生の多くも初めてのため、まずは仕訳のパターンを覚えましょう。